華不朽

文句なしに良作! 幕末を舞台にした物語。主人公は創成期からの一員であり、土方達の友でもある新撰組総長山南敬介。 新撰組の変遷の中で、自分の理想と現実とのキャップに鬱屈を抱きながら、失った過去をどうすることもできない虚無がひしひしと伝わってきました。 何より驚いたことは、違和感が無いということでした。 一人称で書かれてある本作。山南敬介の憂いや、土方歳三の想い。それらが決して平成的な思考に片寄ることなく書いてあります。 現代を生きる我々が、140年も前の人々を一人称で書くことは、とても難しいことです。生きている時代が違うし、考え方も違う。だから、時代物に必要なことは、現代ではあり得ないような実状だったりします。例えば、人が簡単に殺されるような。 本作では、現代ではありえない違和感が有りながらも、道徳的に苦悩する山南や土方の考えが散りばめられ、その苦悩も単純な人情ではなく時代背景を踏まえたものであることが、この作品をとても味わい深いものにしていると思います。 内山暗殺の件を久々に思いだし、とまれ綺麗事に捉えがちな新撰組の残酷さを改めて考え直しました。 読めて本当に良かったです。 とても面白い作品でした!
1件

この投稿に対するコメントはありません