全体的にまっすぐで、簡潔な詩となっていて、ストレートに言葉が入ってきます。
【蝉しぐれ】では、69年前の終戦の日に寄せて、強い言葉ではっきりと平和への願いが語られております。
【Heat of the Night】は、温暖化や環境破壊に対する風刺の意味も汲み取られ、単なる暑さに対する嫌悪感だけでなく、人間がしてきた過ちに対して、また、その過ちへの形骸化された対策のやるせなさに、甚だ呆れてしまっている気だるさというものが伝わってきます。
【線香花火】は、まさに夏の象徴のようなワンシーン。線香花火にちっぽけな火がついて、ちっぽけな火の玉が落ちるまでのちっぽけな時間に、恋人同士の他愛ないやりとりが、夏の夜空に他愛もなくこだましています。
【暑中お見舞い】は、私自身も同じような経験があるので、思わず納得できるような内容です。またその乗り気でなくともついつい書いてしまうもどかしさもまた、ある種の風情を感じます。
【風鈴】は、水無月祓にふさわしく、風鈴の音に魔除けの意味を込めて、風が吹き、鈴が鳴り、邪が祓われるその様を、安らぎとともに伝えています。
メッセージ性が強かったり、わかりやすい内容なので、強く印象に残る作品たちとなっていて、はっきりと伝えるその堂々とした作者の姿に憧れにも似た感情を抱きました。
うたうもの