たすう存在

怪談イベント参加作品という観点から見た時に、あるいはホラー作品として読んだ場合、この作品の評価は少し厳しいものになるかも知れません。 カテゴライズする行為に意味などはありませんが、あえてそうするならば、宗教文学に位置付けるべき作品のように思いました。 ではこの作品は怖くないのかと言えば、もちろんそんなことはなく、じわじわと上がってくる不安と、張り詰めた絃がはじけ飛ぶような件のページなどは、そこいらのホラー作品なんかよりもよほど怖く、またそれと同時に不思議な満足感を味あわせてくれるものでした。 また作者さまの他方の短編作品「風に消失す」と並べてみれば、これらは敗戦文学、落人文学とラベリングしても良い作品なのかもしれません。 物語的な奇抜さこそないものの、全てにおいて非常に高いレベルで完成された作品です。 語彙の乏しい僕などは、面白かった、入り込んだというシンプルな賛辞しか浮かびませんが、主人公エリックの体験を読者もそのまま体感できるような巧みな描写などは、「自分も小説を書く」という方にこそ読んでみてもらいたいなと思いました。 素晴らしい作品をどうもありがとうございました。
5件・1件
レビューありがとうございます。たしかにジャンルを歴史・時代に移した方がいい作品かもしれません。 ホラーにするなら、やっぱりスープに毒が入っていてエリック魔女に殺される! とかが妥当だったかも。しかしながら、ホラー以外の点を楽しんでいただけて幸いです。 このイベのお話を受けた当時はちゃんと幽霊的な作品を予定してましたが、尺の都合ボツになりました。 余談:『風に消失す』で島津豊久は戦死していますが、指揮官義弘が生存したこと、そして戦後の外交により薩摩が領土縮小を(西軍で唯一)免れたことから、一概に敗戦とは呼べなかったりします。余談で長文すみません。

/1ページ

1件