旗俥氷鳰(覇)

卑屈な男は語った。 「あるところに、現実を認識できない世界があった。 「そこで呟かれた言葉・紡がれた文章が真実か否かは人に依りけりだった。 「そんな世界で起こった奇妙な話。 「一人の女が言った。 『私は嘘を吐かず、人を傷付けない』 「其は不可能だ。と一人の男が言った。 「それを聞いた女は 『彼の者が我を誹謗中傷している』 「そう言った。 「男が言った言葉は 『人は誰かを傷付けず、嘘を吐かずに生きる事は不可能。何故ならば“全てが真実であると言う事は何時か己が身を滅ぼす悪手でしかない”』 「と言う物である。 「此は男が生きてきた18の歳月の中で両親・友人・または周囲の大人から学んだ事である。 「しかし、其は女には通じずさらには『我が存在を嘘と断じ、誹謗中傷した』と取られてしまった。 「男は諦めた。 「何故なら。 『他者の真意を己の思うがままに解釈し、其を非道なり。と断ずる事こそが他者を傷付ける事に他ならない為だ。』
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