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消失点のピエロ
天川 青大
2015/4/7 5:11
読了しました。 社会的テーマに挑んだ意欲作ですね。 実際の事件を題材に、小説として作品化するのは至難の業です。 寧ろルポルタージュの方が容易いかも知れません。 しかし、この作品は小説です。 小説とは単に事実を記す事ではなく、虚構の中に人間を描く事です。 一人称で始まる主人公の心情表現が見事です。 胸が詰まるほどの迫真の筆致です。 少年の絶望に至る背景と必然性が丁寧に描かれています。よく調査された上で執筆に踏み切った事が分かります。 小説と作文の違いは何か? 小説とは、伝えたい何かを作中に込め、人間の物語として構築する文芸の事です。 思いつきの荒唐無稽な作文を小説とは言いません。エブリスタに山積する殆どの作品は荒唐無稽な作文です。蓋然性も必然性もなく、突拍子もない作品ばかりで欠伸が出ます。 そうした現状の中、この作品は一線を画しています。 この作品は、現代社会に一石を投じるものです。 被害者、加害者双方の事情に目を凝らし、何故そうなったかが次第に明かされて行きます。 そして犯罪や絶望の遠因は、実は他ならぬ私達なのだ、私達自身が病巣なのだと内省を促しています。 子供は国柄や境遇を選べない。周囲からの侮蔑と苛めが人間を歪めてしまう。犯罪者の多くは実は悲しい身の上なのだと喝破しています。 ともあれ、物語の結末が明るい展望で締めくくられて、ほっとしました。 読者としては人間社会の善意や真摯な生き方が報われると信じたいのです。 悲劇ですが、最後の最後に救われた思いです。 鮮やかな手腕。お見事でした。
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吾妻栄子
2015/4/8 2:25
天川さん 拙作へのレビュー及び評価どうもありがとうございます。 こんなに高い評価で恐縮です。 ご賢察の通り、本編は実際の事件をモデルにはしていますが、 事実そのままではなく、小説独自の設定やエピソードがかなり盛り込まれています。 実際の被害者少年は五人兄弟で幼い弟妹たちと一緒に暮らしていたとのことですが、 本編の「悠太」は二人兄弟の弟で、普段は全寮制の高校に通う別居の兄がキーマンになる展開です。 実際の被害者少年の行動を追って、 「この子は親しい兄のような存在を求めて家の外に出て行った結果、そこで出会った相手からことごとく裏切られたのではないか」 「本当に親身になってくれる兄的存在が近
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吾妻栄子
2015/4/8 2:27
続きです。 加えて、実際の被害者少年はクラスメイトの女子に対して、「一緒にいる不良グループの人たちに目を付けられるといけないから、僕のことは知らないふりをして」と言い含めて彼女を守ろうとしたそうですが、本編では担任の女性教諭にその役割を当てました。 実際の事件発生時には、若い女性の担任教師が不登校になった少年を案じて繰り返し電話したものの、本人と密接な連絡が取れないまま、殺人事件が発生してしまったことに非難が集まりました。 しかし、私はその報道を見て、「この若い女性教師の『常識』の中では、教え子が不良グループと付き合って不登校になった事実は把握できても、まさか惨死の危険に晒されている状況
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