十目18

感想逝きます! 通称「風見鶏の教会」の上で山寺修司のような鮮麗な詩を唄う少女と、個人研究のため「島」にやって来た好奇心をそのまま人にしたような青年の出会う所から始まった本作。 世界観の設定は未来だと思われます。 「許されるなら何をしてもいい」と、「科学」が同時に肥大化してモラルの範囲内の快楽を雑多で頓珍漢に食い散らかすことを当たり前とする橙色の「世界」と、 どうしてもモラルの範囲外の快楽しか受け入れられない人々が集まり、粛々と繊細に吐息と狂気を撒いて暮らす深青色の「島」。 これが主人公の青年の夜と昼の生活を交互に描くことによって対極的に表されてました。 便利な機械にあふれ、もう発展出来ないほど科学が進化し、人々は食っちゃ寝して愛っぽいことして自己顕示欲のためだけに先人の知恵をひけらかす。そんな未来を青年の大学生活を通して描いた昼が、青年と少女が秘密の作戦をしているように島を探索する夜を、より美しくしていますね。主人公達の、知らなかった知識を全て受け入れる姿勢が引く程エグいのに愛らしく描かれていてそこが本作のミステリー要素のミソだったり。 そんな世界観と相まってか大変印象に残る主人公ですが、ローマ皇帝ネロをもとに考えたと聞いて驚きました。素晴らしい歴史の解釈です。 そして本作の主軸である少女は寡黙で台詞が数えるほどしかないのにキャラが物凄く濃くて可愛かったです。 そして数多と出てくる魅力的な脇役達。 「夜の海に花を咲かせよう」というコンセプトの元に全員、日本の駆逐艦の一生を一人一隻に濃縮するなんて…脱帽ものです。 さらに注目したのは島の住民の「お楽しみ」です。たくさんある中、私が目を引いたのは 月明かりの下行われた「人間紅茶」ですね。シルク布で縛り上げた人に、小さな穴をいくつも開けて、香料が香るお湯の底に静かに沈める。綺麗に表現されてて主人公達も不思議そうに飲んでたので騙されましたけどとんでもないですよね。 と、ごく一部を評価させていただきましたがやはり本作の一番の見所はこれら含めて全てを濃縮して放たれるラストです。随分と色にこだわりがあるなと思いましたら…… この納得感は暴力です。 散りばめられた皮肉と優しさ、心に刺さる言葉に様々な感想を持つと思いますがこの最後は… これ、忘れられませんね。 どんなに楽しいことも苦しいことも一人ぼっちの妄想にして頂きありがとうございました。
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京極○彦風のミステリーをイメージしてたら、な、なんですか!? 人間紅茶! さぞいい出汁で美味しかったことでしょう。 このレビューで私も読んでみたくなりました(笑)
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まだ高級肉の入った鍋に手伝いの私が水入れただけですぜ? これから濃厚なダシが二つ入って、 シェフが熟成したダシと選りすぐりの材料からすごいもの食べさせてくれますよ!

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