陶山千鶴

ハロウィン、それは真朱(まほう)にとって、特別なイベントになるだろうと、数日前からウキウキしていた。ハロウィンと言えば、お化けに仮装して、お菓子を大人からもらうイベントである。仮装するのも楽しみだし、お菓子をもらうのも嬉しいが、それよりも一番、真朱をウキウキさせることがあった。 仮装した姿を、金髪少年、山都大聖(ヤマト、タイセイ)に見てもらうことだ。ハロウィンなのだから、山都は大人の男性なんだから、小学生の真朱にはお菓子をもらう権利がある。ないとおかしい。いや、あるはずと一人、決意し、山都に見せる衣装も揃えた。 そして、当日、ハロウィンがやってきた。真朱はピョコピョコと作り物の猫耳と、尻尾を揺らす。イメージとしては化け猫だけど、どちらかと言うと子猫のようだった。いつものポニーテールをほどき、ニャアと鏡の前で鳴き真似をしてみると、気恥ずかしさに頬がほころんだ。ピョコッと尻尾を揺らして、真朱は山都のもとにむかい。一言。 「ト、トリックアトリート」 と何度も練習した合い言葉をなんとか、言うと唐突に扉が開き、真朱はグイッと中に引き込まれた。予想外の出来事に真朱は目を白黒させていると、そっと耳元で囁かれた。 「可愛い子猫ちゃんが、来たもんだな」 「ニャァ!?」 真っ暗な部屋で囁かれ、真朱の心音はドクンッと高鳴った。 「お菓子をくれないと、いたずらしゃうんだよな。どんな『いたずら』をするつもりだったんだ?」 予想外の出来事の連続に、真朱はドキドキしながら言う。 「いっぱい、我が儘を言います。山都様を困らせちゃいます」 「そりゃ困るな。じゃあ、とびきりの甘いお菓子をあげようか」 と山都は真朱の頬を手で包み込んだ。大きな手に支えられ、視線が重なり合う。まるで、キスしそうな。 「あわっ、山都様。それは……」 キスですかと尋ねるより早く、山都はソッと真朱の額にキスをした。 「唇は、まだ、大人になってからな」 ポンポンと頭を撫でられ、真朱はフニャーっと緩み、満足でしゅと答えたのだった。 もうすぐハロウィンなので書いてみました。
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キャ~(≧∇≦)!!!山都さん、ヤる~(≧∇≦)!!!
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コメント、ありがとうございます。もうすぐハロウィンだし、掌編として即興で書いてみましたが、楽しんでいただけたら幸いです。

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