陶山千鶴

本間田奈にとって、ハロウィンは毎年、恒例のイベントであり、片想いの幼なじみと楽しむためのイベントだ。 幼なじみの名は高間裕樹。いつも口喧嘩が絶えない、田奈の幼なじみであり、片想いの相手だ。 裕樹の身体には不可思議な力、漫画や小説に出てくるような力が身体に宿っているのだ。その力を発現させた裕樹の姿は狼と表現するほうがしっくりくる。荒ぶる力を抑えきれず、暴れまわる狼男になってしまう。きっかけは田奈を襲った野良犬を裕樹が追い払おうとしたときだった。感情の高ぶりと共に、力を発現させた。それからずっと田奈は裕樹を見守り続けている。 イベントは裕樹と一緒にいられたという記念日、節目のようなものだ。ハロウィンもその一つ。 「ねぇ、真朱ちゃん。ハロウィンの仮装、何にするか決めた?」 と放課後の学校で田奈は、友達の真朱(マホウ)に聞いてみた。ポニーテールの少女は少し、考え、 「そ、そうですね。私は猫にしようと思っています」 「猫?」 「はい。猫耳と尻尾があれば、きっと、えっと、山都様が喜んでくれると思うので」 と言うと真朱は恥ずかしそうに、頬を染めた。山都様、あの金髪少年のことだろう。自分のことを言えた義理ではないが、わかりやすい。真朱は山都のことが好きなのだ。 こんなに素直に好意を持てる真朱を羨ましく思いつつ、鈍感な山都がいつ気づくか、気になる。男子というのは、女子からの好意に全く気がつかない。 「そっか、猫ね。やっぱり動物がいいのかな」 「いえ、参考程度にですよ。田奈さんはどうするつもりですか?」 「んー、毎年、仮装するから、なかなかね。裕樹の奴をビックリさせたいんだけど」 幼なじみだけあって、なかなかインパクトのある仮装は見つからない。 「それにさ、いつまでも幼なじみじゃ、嫌でしょ。あっちから来ないなら、こっちから責めてみようと思うんだ」 「ふふ、強気ですね。田奈さん」 「それは真朱ちゃんもでしょ。山都さんってライバル、多そうだし、うっかりしてると横合いから奪われるかもよ」 「むーっ、そう言われると困りますが、頑張ってみたいです。子猫の魅力で山都様をメロメロにしたいです」 グッと握り拳をつくる、真朱、 「そうだね。お互い頑張ろ」 田奈もおーと言った。恋する少女達は鈍感男子のために今日も頑張るのだった。

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