陶山千鶴

ジャック・オー・ランタンの正体は、口伝である。つまり、噂話、逸話、創作、伝承から発生した怪物なのだ。伝説の殺人鬼、神出鬼没な笛吹男、ハロウィンに登場するカボチャ頭、クリスマスにやってくる髭男など、数多い物語から、一つの存在に昇華したと言っていいだろう。 正体不明、経歴不明こそが、彼の、ジャック・オー・ランタンなのだ。そして、彼は夜をさまよい、口笛を吹いてまわる。同じようにさよえる魂を呼び寄せるために。 「さぁさぁ、みなさん、今宵は楽しい、楽しい御伽噺の時間ですよ」 集まってきた子供達は、皆、身体が半透明で生気がない。それは、死者だからだ。ジャック・オー・ランタンは、両手を広げ、皆に語りかける。寒い夜に凍えないように、一人ぼっちの寂しさをまぎらわせ、この世の未練を断ち切るために、お菓子を与え、カラン、コロンと足音を鳴らして、口笛を吹く。 「さて、これから語るのは、とある金髪少年と、神様の物語です」 と、なんとなく思いついたので、書いてみた。根拠とか、証拠はなーんもねーけどな。ハハハハ。
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