陶山千鶴

【コメント連載作品。二話目。食人鬼と武芸者】 奪うのなら、奪われる覚悟を決めなければならない。もちろん、自分の命もそうだ。盗賊行為を働く以上、返り討ちにあい、命を落とす覚悟がなければならない。奪われる側だって、盗賊が襲撃してきたからと言って無抵抗で、金品を差し出せば、助かる道理はない。男は殺されるだろうし、女は連れ去られ、夜のおもちゃにされるだろう。 「ここで殺し合いが、起こったのは間違いないですね。もしや、襲撃した連中の目的は、死体なんてことはありませんよね? まぁ、生き残りがいれば、全てわかるんですけど」 部下が、冗談混じりに言うが、覚悟は、そうかもしれないなと、頷いた。この世には死体を収集する連中がいる。内臓を摘出し、売りさばく、または、生きている人間よりも、死体に異常な性癖を持つ奇特な連中がいると、覚悟は噂で聞いたことがあった。 「まぁ、それもないだろう。死体の収集するには、この血では損傷が激しいし、内臓だって傷だらけなら、買い手もつかない」 それに、死体を持ち運ぶのは人目につく、部下達の報告の中には、それらしい情報はない。ますます、混沌を増していく状況に、ひとまず、引き上げて情報の整理をしようかと覚悟が思った直後、 「…………がっ!? ふぁ……!!」 部下の胸から、刃が飛び出し、真っ赤な鮮血が飛び散る。覚悟はドンッと床を蹴り上げ、部下との距離をとった。心臓を一突き、即死だろう。 部下がドサッと、その場に倒れ、小太刀を持った少女が覚悟を睨みつけていた。やせ細った身体に伸ばしっぱなしの髪の毛、ぎらつく瞳は殺意に溢れていた。 「…………お前も、お前も私を『喰い』に来たのか?」 「喰いに来た?」 覚悟は、少女との距離をとりつつ、尋ねたが少女は返事の代わりに、小太刀を構え、奇声を張り上げた。 「ああああああああああああ!!!!!」 「……フンッ」 迫ってきた小太刀を払い落とし、覚悟は少女の鼻っ柱に拳を叩き込んだ。グシャッと鼻が潰れ、鼻血が飛び散る。
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