陶山千鶴

【コメント連載作品。八話目】 みせしめと言えばわかりやすいか、もしくは目には目を、歯には歯をと言うべきかもしれない。 一方的な怨恨で、部下を殺されたのなら、報復として少女を殺せばいい。しかし、少女は、この件にとって重要参考人である。殺すことはできないが、半殺し程度に済ませたというだけの話だ。躑躅に言わせるなら、 「まぁ、油断大敵というか、禁物? 素人に殺されるほうが、マヌケなのよ」 覚悟は一言。 「弱者は死ぬ。それだけだ」 だろう。まぁ、どんな理由があろうとも、少女の鼻っ柱を拳でぶん殴り、床に叩きつけて気絶させ、荷物のように担いで来た覚悟には、さすがの躑躅も閉口したが、それは、それ、これは、これ。終わったことをいつまでも続ける理由はない。 「白髪の女と、片腕を失った新人の使用人が、屋敷のほうから走って行ったのねぇ」 躑躅は、フムと頷き。 「ねぇ、覚悟、貴方はどう思う? 今回の一件、物取りの盗賊かしら、もしくは白髪の女?」 「死体が全くなかったことを考慮するなら、物取り目的ではないでしょう」 ここで人食いの鬼が死体を食い尽くしたと突飛な発想にはたどり着けない。 「では、白髪の女? 辻斬り、殺人鬼かしらねぇー、ふーむ、鬼ねぇ」 躑躅はふと思い出したことを言った。 「そう言えば、風の噂で聞いたのだけど、ここらあたりでは白髪の鬼が現れるそうよ」 まぁ、ただの噂だけど、その噂をバカにできないから、噂なのである。火のないところには煙はたたない。 頭の堅い奴なら、くだらないと放置するが、躑躅は白髪の鬼のことを頭の片隅に引っ掛けておいた。何か、あるかわからないからだ。 「ま、とにかく、その白髪の女と、片腕の使用人を探しましょうか。そして、覚悟」 ちょいちょいと、覚悟を手招きし、一言。 「覚悟、アンタは保護したお嬢ちゃんのお世話をしなさい」
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