陶山千鶴

【コメント連載作品。九話目】 夢を見ていた。自分の右腕が、食いちぎられ、喰われ、バラバラになっていく。ひきちぎられた右腕の傷口から真っ赤な血が流れ出し、それが道のように続き、追いかけてくる、白髪の鬼。 どこまでも、どこまでも、どこまでも、足はもつれ、汗が止まらない。死ぬ。死ぬ。死ぬ。立ち止まれば死ぬ。走り続けないと死ぬ。喰い殺される!! 「…………ッ!?」 飛び起きた。どうやら夢を見ていたようだと由真が気づき、そうか、夢だったのかと安堵し、流れた汗を拭おうとして『いつのものように』右腕を動かそうとしたとき、ズキンッと激痛が走り、夢ではなく、現実だったと思い知らされる。誰かが治療してくれているようだが、不安なんてなくならない。ここはどこで、どうなったか、あの時、赤色の衣に金色の髪の毛の少年が居た気がした。 「起きたか」 と、扉を開き、少年が入ってくる。赤色の衣ではないが、目を引くのは、やはり、金色の髪の毛だ。 「誰よ。アンタ」 「お前を助けた者と答えよう。名前は山都方正(やまと、ほうせい)」 短く、金髪少年こと、方正は答えた。 「なんで、助けたのよ。アンタと私は無関係、見ず知らずの間柄でしょ!!」 激痛の走る、右腕を押さえ立ち上がろうとするが、ふらついて倒れそうになった。 「右腕を失ってるんだ。まともに歩けるようには、訓練が必要だ」 方正は言った。両方に同じ重さを置いた天秤があって、その片方の重さを取り除くと、天秤は傾く。人間も同じだ。片方の重みを失った由真が、歩けるわけがない。 「っ!! そんなことどうでもいいのよ。いつまで触ってるんじゃないわよ!!」 ドンッと方正を突き飛ばし、床を転がった。立てない、これじゃ、逃げられない。 「どこに行くつもりだ。そんな身体で」 首根っこをつかまれ、布団に放り込まれる。
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