陶山千鶴

【コメント連載作品。十五話目】 隙だ。いくら、異形の相手でも、手負いの化け物を仕留めることができたはすだけれど、覆面の男達は誰一人、動くことはできなかった。 蛍火の体内から取り出した物があまりにも気味が悪く、彼らは立ち尽くしてしまった。 それは白い、棍棒のようなもの。ただし、その素材が問題だった。ゴツゴツとした表面、ねっとりと体液の滴り、地面に落ちていく。白色の棍棒を見た、覆面の男が呟いた。 「じん、こつ」 人骨、おそらく、何人もの人間の骨を混ぜ合わせ、一本の棍棒に叩き上げた。素材にしろ、なんにしろ、誰が好き好んで使いたいと思うだろうか。 彼らとて武人である。覚悟を持って戦場に立っている。生死をくぐり抜け、修羅場を越えるために鍛錬を積み重ねてきた。 けれど、根本的な恐怖だけはぬぐい去ることはできない。目の前にいる、白髪の女が、自分達とは違う、生物だとわかってしまった。いや、認めたくなかっただけだ。だから、捕縛ではなく、真っ先に殺害を選んだのだ。 「てっ、てった、がぁっ!?」 撤退しろと誰かが叫んだときには、そいつは人骨の棍棒の餌食になっていた。真横に振り抜かれ、男の身体がクの字折れ曲がって吹っ飛んでいく。 時間は、ほとんどかからなかった。恐怖にかられた彼らは、なすすべもなく、白髪の鬼に殴殺されていく。絶叫と悲鳴があたり一面にまき散らされ、静寂が取り戻されたときには、血まみれの蛍火と肉塊と化した覆面の男達だけ。 蛍火は男達の肉塊に踏みつけ、唾を吐いた。食べる価値もないゴミを放置し、身体に突き刺さった矢や刀を引き抜き、捨てて、絶命した少女の見下ろした。

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