【コメント】

財布はカタル

（応援）　白いワイシャツに茶色いタータンチェックのウェストコート。サスペンダーで吊った裾の七分あたりを絞ったズボン。赤と紺の蝶ネクタイ。無造作ヘアを目指して失敗したようなぼさぼさ頭と、丸眼鏡の奥の緩い垂れ目。　向智貴金属店の天然甘党ゆるゆる店長の推理が冴える、安楽椅子探偵本格推理小説が再登場！待ってました！　今回の作品集は、前作品集よりも『残された品』からの推理展開が強調されています。必要な情報が少なくなり、推理を楽しみたい読者には一見不利なようにも思えます。しかし、それは浅慮というもの。確かに情報数は少なくなりましたが、情報量は変わりません。提示方法が変化し、凝縮されているのです。つまり、読者の読解力が試されるわけです。 ……く、悔しくなんかないんだからっ！　勢いやお涙頂戴でごまかさないトリック主体の安楽椅子探偵本格推理。甘いものに目がない天然気味の店長と、胸中で切れ味鋭くザクザク突っ込む語り手『私』の緩い日常。さらに、『品物』の語る真相を読み解いた店長が、人の心の有り様を考察する最後の一言も魅力的です。　まずは最初の一編から、いかがですか？フェアな真っ向勝負を楽しめる折房ミステリ、ぜひ、お楽しみください。

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