終始一貫、飼い猫目線で描かれていれば、ひょっとすればこのイベントにおいて指折りの存在にもなり得たかと思います。冒頭、〆が猫であることの必要性があまり感じられなかったのが、イベントの趣旨としてはもうひとつ足りなかったのかなぁと感じます。 ですが、そんなことは作品を一個のものとして捉えたとき、読んだときにはなんの関係もない話です。 難解な文章には、一度ではその意味を最後まで読み取れず悶々とする類いの余韻が生まれることがあります。これは悪いことでもなんでもなくて、ある人はそういう話だったのだと納得し、ある人は意味がわかるまで何度でも読み返すというような、受け取り手によって印象の変わる変幻自在さを持っているという事だと思います。いかようにも人を引き込む作用があるのだと。 この作品にはそれに近いものを感じました。要約してしまえばどんなストーリーでも簡単になってしまうものですが、それをどのように見せるかで特徴が変わるのが小説です。 難解、不思議といった肉をつけられたこの小説は、読む者それぞれに違った余韻を残すという技を存分に発揮していると思います。 僕は、死人として現れたもう一人の自分を、『もう一人の自分』として受け入れた世界線の向こうの彼女に幸多かれと、そんな事を思いました。
1件

この投稿に対するコメントはありません