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いつかヤドリギの下で
有月 晃
2016/12/31 16:28
丹精込めて発酵させた茶葉が如く、近代英国の芳醇な香りが文章から匂い立つ。 今回もまさに、あまねワールド。 数回読み直して物語の骨子だけ抽出すれば、非常にシンプルな構成。それをしっかりとリードする基礎的な筆力など今さら語るまでもなく、この掌編を傑出せしめるのはやはりこの世界観、そしてそれに相応しい登場人物達。 冒頭にて、主人公の捜し人と「ルーク」と名乗る成人男性の外観が対比されて「この二人って同一人物なのでは……」という読者の疑問点はいったん棚上げされる。 その後も軽妙な台詞が二人の間を飛び交い、さらにいくつかの疑問点が脳裏に並ぶ頃、訪れる転機、そしてそれに続く約定された結末。 気が付けばカップの中身はスルリと喉を落ちて、短編とは思えない濃厚な味わいを口内に残しつつ物語はクリスマスらしい終幕を迎えている。 いかにも英国的ウィットに富んだ、小粋な作品。ご馳走様でした。 なお、作中で登場する「グレトナ・グリーン」なる地名が気になり、調べてみました。ほほぉ。こんな町があったのですね。 こういった要素が、作中に嫌味なく散りばめられているのも、この作者の著作に触れる醍醐味の一つです。今回も楽しませてもらいました。ありがとうです。
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有月 晃