有栖川 露陰

「私の空想の力もこの高みには達しかねた。 だが愛ははや私の願いや私の意を、 均しく回る車のように、動かしていた。 太陽やもろもろの星を動かす愛であった。」 (ダンテ『神曲』天国篇第三十三歌より) 私は戦前の女学生文化(吉屋信子の『花物語』シリーズ読破は夢です)やベル・エポックなヨーロッパ(サラ・ベルナール、リアーヌ・ド・プジーも有名ですね)を範とする百合ファンなので、猟奇的な展開のなか自体にときめきを感ずる事は難しかったのですが、デウス・エクス・マキナ的に訪れる結末が、赦しによる愛の成就である点に感嘆しました。 ヒロインは現代のベアトリーチェやグレートヒェンなのですね。 二人だけの世界が輝かしい至高天なのか、或いは煉獄なのか、そのどちらでもない何処かなのか疑えば、皮肉な推察は可能ですが、カタストロフの果てに辿り着いた安息の地の風情はアヴァロンの観もありますね。 奇抜にみえて、実は古典の美の精髄が息づいている、というその点において感服であります。
1件・2件
これまた丁寧なレビューありがとうございまするm(_ _)m その辺りは未読でしたがそう! 神曲だけでなくファウストの影響も有るのです! あの最後の空間は敢えて詳細省きましたが アヴァロンて解釈も有るとは恐れ入ります! やはり古典や神話を抑えねば 新しい物語は紡げませんからねえ
1件
古典や神話は本当に学ばなきゃいけないなあ、と古典に触れるたびに感じます。 自分はそれを巧く活かせていないですが、ちゃんと神話や古典が血肉となり、新しい作品として表現できるのはやっぱり凄いな、敵わないな、と常に感じています。

/1ページ

1件