僭越ながらレビューさせて頂きます。 春が待ち遠しく、寒さに凍える季節。 冒頭から、ラストに繋がる構成に驚きました。 桜をキーワードとして物語を作る場合、春が主体の作品が普通です。それを、ラストの展開に桜の季節を持ってくる構成が素晴らしく、物語を追って行く度に色どりを添えていました。 そんな構成のラストが本当に秀逸で、桜は舞い散るもの……誰しもが思うイメージを覆しています。 桜は舞い踊り、それを見た新芽が命を芽吹く。散るのではなく、呼びかけているのですね。桜の雅が、新芽の繁に優しく楽しそうに話し掛けている……そんな想像をしてしまいました。 次に全体の感想ですが、繁の心の声と、雅の謎を含んだ表現が面白いです。二人の心理描写と駆け引きを、繁目線で感じながら多くを想像させました。クスリとしてしまうところ、不安に感じるところ、疑問に思うところ……繊細な表現から多くの想像が楽しめます。 気がつけば、繁の葛藤に感情移入している自分がいます。 勿論、伏線の回収もしっかり行われている為、読み終えた時には切ないながらも爽快な気分になれました。 桜吹雪に見立てた紙吹雪からの運命的な出会い。 キラキラと輝く時間。 時の流れと共に、信じる心を伝えるラスト。 幻想的で美しく、儚く切なく、それでいて前を向こうと思わせてくれる秀逸な作品です!
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