一ノ瀬 八雲

とてもシンプルなタイトルなのに、インパクト抜群の表紙。 そのギャップに、私はこの作品のページを開こうとする指を止める事が出来なかった。 きっとお笑いのカテゴリーなのだろう。 そう思って読み始めた私の考えは、見事に覆された。 これほどの泣ける童話を私は読んだ事がない。 大人の童話。それも、人生の酸いも甘いも体験済みの大人が読む童話だ。 しかも、作者が紡ぎ出す言葉のチョイスが、どこか妖艶で艶っぽい。 主人公である『性ウチ』と呼ばれる女性もその一つである。 女性に対して『性ウチ』などと表現するのは失礼極まりないにも関わらず、作者は、あえてこの表現を使う事で、主人公が持つ妖しい妖艶さを見事に表している。 それだけではない。この作者は、祭りという極一般的な行事を題材としながらも、ノアの方舟や古代イスラエルの謎をも解き明かす力量には、心底脱帽しました。 これだけ見ると何やら堅苦しそうな作品に思えるかも知れないが、驚く事にとてもリズミカルで読みやすく、ページを捲る指が止まらなくなる。 驚き、感動、エロス、謎解き。 ちょっぴり笑えて、がっつり泣ける。 そんな大人の童話を是非とも読んでみませんか? (★) レビュー第2走者へのお題『しらたま』
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