吉田 群青

まずこの作品が書籍化されなかった事が本当に悔やまれますが、エブリスタで公開されたのは、岡田作品のファンである自分にとっては不幸中の幸いでした。 スマートフォン、SNSといった現代生活には必須と言ってもいいメディアを媒体として、異国の呪術がまさにウェブ、蜘蛛の巣のように拡がっていく恐怖。 無くてはならないものに込められる呪い。毒を直接飲まされるのではなく、いつか自分が飲むであろう何処かの水に毒が仕込まれているという恐ろしさは、本能を戦慄させる絶望感を読者に感じさせます。 ですが作者が読み手に警鐘するのはそれだけではなく、SNSという便利なツールが持つ普段意識されない闇。タイ呪術は一つの分かりやすい寓意に過ぎず、本当の「毒」は、チャットの向こうで文章を紡いでいる人間の事を、それを受けとる側が、実は何も知らないという恐怖なのだと思います。 紗名と日々を共に過ごし、親友だとさえ思っていた清瀬ですら、読んでいてゾッとするほど利己的で冷たい一面を隠していました。況してや主人公はSNSだけの繋がりしか持たないネット上の「親友」であるはずの曾根田祐を、彼の闇の一面は勿論、本名すら正確には知らされていないのです。 これを、我々が日々ネットメディアを介して行っている友達付き合いと、何ら変わらない先で起こり得ないと、誰が断言出来るでしょうか。 ですが、作者はそこに一つの救いも織り交ぜています。強大な影響力を持ったSNSも、使うのは人間に他ならない事。太古の昔から火を正しく使う事を、刃物を正しく使う事を、そして言葉を正しく使う事を学んできた人間は、必ずその恐怖を克服し、ネット上でも真の信頼関係を結べる事を学ぶだろう。SNSでの繋がりしかなかった祐有を、主人公が最期まで見捨てなかった事に、そしてその友情に祐有も最後には応えた事、そして主人公を信じて、祐有を救う事に尽力した仲間達に、作者が込めた願い。 媒介するものがネットであろうが、人と人とが結ぶ限り、絆は絆たり得る。それもまた本作の魅力であり、大きなテーマの一つであると感じました。 ああどうしよう、とうとう完結しちゃった。わくわくしながら更新を待つ日々が終わってしまい、ちょっとした「スカロス」に陥っています。次回作「曾根田君青と巡る、魅惑のタイ、グルメ・リゾート」を楽しみにしています(笑)。
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群青さん、おはようございます。 フォロワーに素敵なレビューをありがとうございます。 確かに発売されなかったのは残念な気持ちはあるのですが、こうして読んで頂けてレビューまで頂くことができ、嬉しさと共に感謝の気持ちでいっぱいです。 群青さんがレビューに書いて下さったとおり、フォロワーの主となるテーマは、「ネット世界における友情」です。 本当にこれは難しいところだと思うんですよね。 一昔前のエブリスタなんかはいい例なのかなと思うのですが、個人を特定できるような情報は流せなかったり、別に連絡をとる手段がなかったり、まわりにコメントが見えていたりすると、気持ち的には親しいはずなのに、よくよく考え

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