この作品の良さは、ラスト2ページで重要な2つの伏線を一気に回収する事だと思います。 と言うのも、“正常“な人間の価値観でこの作品を読み進めれば、綺麗な落とし所と言うべきか……在り来たりなオチを想像すると思うからです。 しかし正常とは一体何だろうか? 夫婦とその子供2人が家族4人でキノコ狩りに来ています。主人公である夫は、妻を驚かせようと張り切ってキノコを採ります。 これだけの情報で、読み手は仲の良い家族を勝手にこの作品に当てはめてしまうのではないでしょうか? 正常、当たり前、よくある家族モデル。まさにミスリードですね。 その正常は中盤に差し掛かり、主人公である夫の語りで少しずつ歪みはじめます。ただ、その歪みもある意味、家族内の相関図ではよくある正常な状態……よく耳にし、場合によっては体感している方もいるのではないかと思います。 夫の語りから知れる僅かな心の歪みが1つ目の大事な伏線。読み手の価値観を徐々に崩しつつ、謎の人物と温泉、お題である星空に願い事を絡めた2つ目の伏線。 この2つの伏線がラストに畳みかけるように意外なオチへと導き、我々読者は作者様の手の平の上だったことに気付かされます。 今作は人間の醜くも実際にあり得る所を狙った絶妙な心情にファンタジー要素が加わり、読み応え十分な傑作に仕上がっています。 興味深い作品をありがとうございました<(_ _)>
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凄い。レビューというか、考察の域ですね。 深くそしてとてもわかりやすく解体していただいてありがとうございます。 僕が付け足すことはいらないくらいですね。とても嬉しいです(^_-) 今思い返すと、はじめからこのオチを用意して書き始めたわけじゃないような気がしてます。 なら、どんな落ちだったのか思い出せないのですけど。 ただちょっと前に、山で行方不明になった子供が、数日後に生きていたというニュースを思い出して、なんとなーくで書き始めたのは思い出せます。途中ではじめに戻って修正した記憶もありますから、オチを変えたんでしょうね。 それがたまたまうまく行っただけだと思います。 いやあな落ちですよね(笑)

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