黒桜

とにかく長編で、人物面では登場人物の過去や性格、物語の面ではそれぞれの思惑や世界設定(魔法のルールなど)、登場人物同士の関係などがとても詳しく描写されている作品です。 語り手がわかりにくい部分をすべて説明してしまうところや物語の都合上主人公があまり出てこない上視点が(語り手視点だったり主人公視点だったり脇役視点だったりと)コロコロ変わるところなど、小説としてどうなの?という部分もありますが、あえてタブーをおかすことによって読みにくさをなくしているので、これはこれでありだと思います。 幾つかの勢力がそれぞれの別の目的のもとに戦うという複雑なもので、キャラの数もとても多く、そのキャラ達の行動がパズルのようにつながりあって世界に影響を与えている、みたいな話です。 そしてそのひとりひとりの心理描写や過去がこまかく描かれており、それとは別に魔法や科学技術の設定も細かく、また陣営ごとに持っている技術や文化が違うというのがこの作品の特徴だと思います。 舞台が地球ではないというのも良いと思います。 登場人物は大義のもとに行動しているものから極悪人まで色々いて、彼らがすぐに裏切ったり恋人を変えたり善人が(強烈な出来事で)悪人になったりと忙しい作品です。 敵が攻めてきても内輪揉めしていたり、主人公側の主要人物含めみな自分のことしか考えていなかったりと、現在世界でもこんなに惨くないんじゃ……などと考えてしまうくらいブラックな作品ですがそういった愛憎劇もみどころのひとつだと思います。

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