本編未読なので、エピソード0となる本作へのレビューを書かせて頂くのも失礼なんじゃないか…とためらいもしたのですが、読後の切なさにも似た余韻をどこかにぶつけたい衝動を抑えることができませんでした。 情報というのは時に凶器となり得ます。 知りたくもない情報が、勝手に流れ込んでしまうという能力を持った少年。周りの人々が知らないうちに、多くの凶器に傷つけられ続けた毎日は、どれほど孤独だったことでしょう。 他人に触れること、踏み込まれることに恐怖する思春期ならではの主人公の心の機微が痛いほどリアルです。 ケーキの甘さ、バラの棘に傷ついた指先。 少しずつ用意された小道具に、読者もいつの間にか主人公の心情に寄り添っている。そしてラストに引用されるリルケの詩の1編がどこまでも切ない。 自分が春樹なら、美沙なら、一体どのように生きていくのが正解なのでしょう。 ……できることなら彼らの幸せを願わんばかりです。 本編で彼と彼女がどのような物語を紡ぐのか。 少しずつ本編も読ませていただこうと思います。
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またたびまるさん~! 体調のすぐれない時だというのに、このエピソードゼロを読んでくださり、そしてとても素敵なレビューを、ありがとうございました! 本当にもったいないほど嬉しいレビューです(;_;) 春樹を知らない読者様にも読んで頂きたいと思って書いたSSでした。 本編ではいきなり春樹が美沙の部下として働く設定から始まっていて、美沙はとても口の悪い厳しい上司として登場し、印象が悪いのですが、最初の出会いはこんなに繊細だったことを一度書いておきたかったのです。 ケーキ、薔薇、詩集、それらの小道具にも注目してくださった事がさらにうれしいです。 この起伏の無い地味なSS、小道具たちに頑張ってもらう

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