覇王樹朋幸

★  親より先に死んだ子供は三途の河を渡ることができずに、その川原で延々と石を積み続ける作業をしなければならないらしい。 「一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため……」  積み上げては鬼に崩され、それを永遠に繰り返す。終わりは、ない。地獄に落ちて針の山を登ることもない。釜で煮られることもない。しかし、その罪が許される日が来ることも永遠にない。それは救いなのだろうか? それとも苦しみなのだろうか?  人の理を外れた世界で、どれ程融通が利くかは定かではない。もし融通が利くのであれば、男性客は罪が無いにもかかわらずそこに居ることを選んだ。もし融通が利かないのであれば、自ら罪を作り、そこに居ることを選んだ。ここで言う罪とは、つまりはそのことだ。いずれにせよ、何十年もの間に様々な苦楽を経験してきたであろう男性が、その死に際に思い出したのが青春の日々とその日々を共に過ごした初恋の人であったのは、それ自体が悲しいことでもある。  いつかは終わる、本当にそうなのだろうか。  思い出しては忘れるを繰り返すその流れを、止めるものは一体何なのか。  どんな河も、億の単位の月日で考えれば、いずれは干上がるか海の底に沈む。人の想いも、いずれは必ず、人知れず消滅していく。永遠に繰り返す、それはとても悲しい。しかし、その消滅も、またとても悲しい。いずれにせよ悲しいのであれば、徹底的に悲しみ抜いて欲しい。彼も彼女もそれが許される立場にある。だからこそ、それができる彼と彼女は、ある意味幸せなのだろう。読了後、柔らかい綿毛に触れるような温もりを感じたのは、それを無意識のうちに実感したからなのかもしれない。 ※ 他者を評価できるような者ではないので、無評価でご勘弁ください。
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Phi Fernot様 最後まで読んでくださってありがとうございます!レビューも感謝しております。 死に関しても深いところまで読み込み、考えてくださったことレビューから感じられます。本当に嬉しいです。 素敵なレビューありがとうございました!
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 本の巻末の解説を書くくらいのつもりで書かせて頂きました。お気に召して頂けたようであれば幸いです。レビューの質は、対象となる作品の質以上にはなりえません。今回ななせさんの作品へ付けさせて頂いたレビューは、個人的にはかなりできが良いものだったと自負しています。しかしそれは、ななせさんの作品が私個人的には良いものであったからに他なりません。良い作品には、良いレビューが付く。  どれだけ作者の世界観に近づけるかが、私のレビューの基本姿勢になります。だから、世界観があやふやだったり適当だったりする作品のレビューは難しい。その点、ななせさんはご自身の世界観のようなものを確りと持っていらっしゃると感じまし

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