光姫 琥太郎

じつは冬可さんの作品を読ませて頂くのは初めてなんですよね。なんだかドキドキしました。 まずは、あのクソカオスな(褒め言葉)レビュー&タグ群を点と点ではなくひとつの線で繋いでしまった手腕はお見事としか言いようがないです。個人的には最も気になっていたアニサキスの回収もじつにスマートで、思わず「おお!」と一人で唸ってしまいました。 しかしまぁ、恐ろしいまでに読者の感情を揺さぶる作品ですよね。これホントにイベント用作品なのかって疑うくらい。 激しさの中の冷たさ、微笑ましさの中の物悲しさ、美しさの中の毒々しさ…。各場面において、属性の異なる感情の変化球が四方八方からガンガン放り込まれてくる。 例えば、主人公が姑に反撃し力関係が逆転するあの場面。 ストレートに書けばストレートに爽快感を読者に与えるシーンなのですが、『暴力的だった父は護身術と格闘の経験があったのでギリギリの攻めかたをした。母親は感情に任せて殴るので、下手くそだった。父と母の血が半分ずつ流れている。』と、こうくるワケです。これにより、爽快感の中にやるせなさや切なさが生じてくるんですよね。 いや、このシーンはホントに鳥肌立った。巧すぎる。 こういったあらゆる感情が渾然一体となって読者を襲うのです。時間的な都合もあり、途中で一度読むのを中断しなければならなかったのですが、その間も続きが気になって仕方なかったですよ。これ一体、最後どーなんの?って感じで。 主人公が心情を赤裸々に吐露すればするほど、物語を読み進めるのになんだか後ろめたさを感じてしまう。それでも結末を知りたいという背徳感。 そして最後、生々しい心情描写を最小限に抑え、台詞メインで展開するあの美しいラストシーン。ここでは心情ではなく情景をメインで描写することにより、それまでの主人公視点から第三者視点へとシフトさせられます。そしてそれは、作者様が読者のために開けておいた唯一の「救いのスペース」だったように思えてならないのです。 『私も主人公も、もうこれ以上なにも語りません。だから、せめてこの瞬間だけは、皆さんの妄想で亜矢をめちゃくちゃ幸せにしてやって下さい』、と。 すみません、語りたいことが多すぎてなんだかまとまりのないレビューになってしまいましたが。 何にせよ、本当にお疲れ様でした。 でもよかった。この作品を読めてよかった。 とても素晴らしい作品でした!
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