新垣蛍

私にとっては初めてのかおりさん長編でした。 普段の文体とは異なり、描写の多い大衆文学寄りの文章になっていたと思います。 おそらく意識されているのだと思いますが、できるだけ客観的な事実だけを書いて、「寂しい」「悲しい」など直接的な心情描写を避けるところが物悲しく鬱屈とした物語の雰囲気を作り上げていたと思います。 物語のラストシーンも個人的にかなり好みでした。 主人公が真実を知って自殺してしまうところや、そのことを刑事さんが察するところ、情景描写の美しさも相まって、最後を飾るにふさわしいものになっていたと思います。 ただ、残念だったのが、トリックというか、婚約者の死の真相です。 以前にも同じものを別の作品で見たことがあるというのもありますが、それ以外にも作りの甘さを感じます。 本来姉弟という関係なのであれば、ある程度顔立ちなど容姿に似ている箇所があると思います。 しかし、本文中では婚約者に「主人公でいいのか」と何度もたくさんの人々が問いかけます。それは美人である婚約者に対し、十人並みな主人公を指しており、あまり二人の外見は似ていないのではないかということが推察されます。 このことから、読者が真相を推理することは困難になります。 もちろん二人とも色白であったり、お互い養子であることなどは書かれていますが、何度も繰り返される主人公と婚約者との似合わなさに対し、色白なのは冒頭に一箇所だけで。養子であることは繰り返されていますが、それでも色白で養子ということだけで真相を推理するのはかなりむずかしいです。 血液型など、それ以外のほとんどは真相とともにその根拠を示されているので、読者が推理をして楽しむということはできません。 この作品はヒューマンドラマジャンルであり、トリックをそこまで重要視しないということがあるのかもしれませんが、それならば真相を見破れる部分を中途半端に置いておくのではなく、最初から読者に推理に必要な要素を見せないようにして、最後に思いっきりどんでん返しをしてしまったほうが面白くなるかと。早坂吝さんの「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」を参考にしていただければ。 偉そうなことを言って、容姿が似ている描写がしっかりと真相前にされていたらごめんなさい。私の見落としです。 今後もこういった文体のかおりさん作品が読んでみたいです。 新作を期待しています。
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蛍ちゃん、レビューありがとうございます。 実はこのレビュー、私は読んでかなりショックを受けました。自作品への肯定的ではない意見が書かれていたからではありません。次の一文についてです。 >本来姉弟という関係なのであれば、ある程度顔立ちなど容姿に似ている箇所があると思います。 もしかすると蛍ちゃんのまわりの兄弟はみんな容姿が似ているのかもしれませんが、それは一般的ではありません。 容姿の整った兄弟と外見を比較されたからかいをきっかけとするいじめがあることを知っていますか? 姉弟ならば容姿が似ているという主張が科学的に正しくないことはおいておくとしても、この発言はあまりに乱暴に思います。 人間の中
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返信ありがとうございます! 容姿に関して不用意な発言をしてしまい、申し訳ありません。 ですが、それを含めて、反論もさせていただきます。 私の周りに容姿が似ている兄弟がいるというのももちろんですが、兄弟と容姿が似ていないことでからかわれるということは、いじめた側は「兄弟は容姿が似ているはずだ」と認識していたということです。 実際にそういったいじめがあったということは、兄弟で顔立ちが似ていない人がいるということと同時に、一般認識としては兄弟は似ていると考えられているということの裏付けでもあります。 かおりさんはこのいじめのことを「知っていますか?」と書かれましたね。私は存じませんでした。 この
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