江田公三

 物語の設定世界や登場人物は序盤でほぼ説明されているものの、それで色褪せることはありません。この作品は設定の奇抜さや登場人物のエキセントリックなことではないからです。登場する人物には悪意に溢れた敵役も、超人的な(まあある意味で人をこえていますけど)英雄達ではありません。日常からは離れた物語ではありながら、実は私達のすぐ傍、肩に舞い降りる花びらのような距離にあります。  文章のなかにはしばしば「ほいほい、ふう!」「ひとつ、ふたつ」「どるどるどる」といった、感覚的な独特のリズムによる描写が登場します。説明的な言葉よりも私達に語りかけます。長さや重さや時間の経過を数字で示されるよりも、「どるどるどる」という方が川を行く船のエンジンが、自らの身には些か少ない馬力に身を震わせて進む感覚が伝わってきます。  美しいものを見ると、私達は写真を撮ろうと携帯を取り出してしまいがちです。しかしながら微かな夕明かりに浮かぶ花筏のような本当に美しいもの、大切な思いは写りません。私達は、この物語に登場するような身近な人の温かな気持ちやメッセージを、この目でこの肩でこの胸で受け止めていければ幸せになれるのだと思います。  素晴らしい物語をありがとう。
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江田さん、「桜風会は18時から」をお読みいただき、ありがとうございます(*^^*) おっしゃる通り、スマホで読まれることや桜の淡い雰囲気にあわせて、オノマトペを多用しました。 「ほいほいふう!」は、読者が花吹雪の下にいるときに思い出してもらえるように、少し馬鹿馬鹿しいくらいにコミカルにしました(^^) 花筏にも触れていただきありがとうございます。 エピローグは最初は無かったのですが、ユキエとアベの再会で終わると余韻がない、と校正をお願いしている人に言われて加筆しました。 桜の季節は過ぎましたが、空の彼方に想いを馳せていただければ嬉しいです。 素敵なレビューを、ありがとうございました。

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