古い民家の納戸を整理していたら、埃で薄汚れた布で蔽われたいくつもの精緻なジオラマが出てきた。私は興味の向くままセッティングしてみた。 駅、路面電車、跨線橋のそばの工事現場、事務所、病院、刑務所、菓子問屋、製綿工場……ひとつひとつが細部まで作り込まれていて、情熱を注いだというよりむしろ狂気に近いこだわりに、少なからず震撼した。 なかなかの重労働ではあったが、暗い納戸の中で組み上がった街は、わずかだが希望色をしていたーー。 片付けそっちのけで、そのジオラマを眺めるためだけに、私は夜な夜な納戸を訪れた。 そして、模型の中に息づく人々を飽きもせずずっと眺めていた。 すると、にわかには信じられなかったが、私が観察していることを感知した彼らが、今度は私を観察し始めたのである。 彼らからすれば、こちらの世界こそ模型なのだろう。私は混沌のうちに意識が遠のくのを自覚した。 そんな気にさせられる作品です……どんな? (^▽^;) レビュアーは妄想はなはだしいのですが、この作品は夜と静謐とシューゲイザー(※)がよく似合う。 実際、ここ数日の私は、26年前のイギリスのシューゲイザーバンドのアルバムを引っぱりだしてきてヘビロテ中だ。 先が楽しみ過ぎる作品。ぜひご一読いただいて、あなた自身の深淵をのぞき見てほしい。 ※参考 https://goo.gl/621QxA
3件

この投稿に対するコメントはありません