尾瀬月都

恋愛物はエブリスタにあふれています。 そのあまたの作品に比べて、この作品、ひいては作者がとくに優れているのは、 簡潔な文体にあります。虚飾《きょしょく》を連ね、作品を損ねてしまうものが多いなか、事実を淡々と記述し、それでいて読者を引きこませる筆運びがすばらしい。 それから恋愛物において、三角関係は必然だと思いますが、庸介の思う庸介-斉木-椿の三角関係と、椿の思うそれとが微妙にずれているのも面白い。 そして作品における視点です。本来、三人称多視点で二者関係の両側から、気持ちを描き出すとすべてが明らかになり、つまらなくなることが多いのですが、そこは恋愛、人間関係を熟知した作者です。庸介の椿に対する気持ちのベクトルと、椿の庸介に対する気持ちのベクトルをずれさせることで読者に二人のすべてを明かさないことに成功しています。 作者の作品を(すみません、全部ではないです!)拝読しましたが、この作品が一番好きでした。それは、この作品が恋愛のみならず、椿の自己回復の過程を描いているからです。これは椿の成長物語でもあるのです。 最後になりましたが、椿が庸介が斉木がどのように変わっていくのか私も楽しみにしています!
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尾瀬さん。 レビューありがとうございます。 いやもう、恐縮しきりです。 そして、このような視点でお読みいただいたというのがとても嬉しいです。 ぜひ最後までお付き合いください。 よろしくお願いします。
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