あーる

存外、自分のことは自分が一番見えていないのかもしれない。他人の方が自分をよく知っていたり、相手に自分を映して初めて自分の本質を知ることもある。 自分の立ち位置が見えない高校生 穂高君が、叔父夫婦のペンションで過ごしたひと夏に、大切に思える人とたちと出会い、知り、自分の心を、道を、みつける物語。 不器用な青さを感じる高校生ふたりの細やかに揺れ動く心情が、瑞々しく、そして切なさを纏い、じっくりと綴られていきます。 同性への恋心を意識してしまうことへの戸惑い、自分とは違う人への想いを抱いているであろう相手を思う苦さ。 そして、それぞれの背景……それは自ら知ろうとしなければ知らないままの世界。近所の気のいい仲間、賑やかな宿泊客、彼女。彼らと関わることで、その事に気づかされた穂高君は、このひと夏で、グンと成長したように思えました。早く、大人になりたい。そう呟く穂高君。あの夏、あの場所で彼はその扉を大きく開いた気がします。 タイトルである『みずぎわ』。境界線。でもそれは単に引かれた線とは違い、越えた先には異質の世界が待っている。 穂高君、真紘君が、恐れや不安、戸惑いながら、そのラインすれすれを迷いながら歩いている姿が見えました。 特にBLにおいて、憧れ友情や信頼が恋心になる境界線はどこなのだろう。その滲んだような曖昧さやもどかしさがこのジャンルの醍醐味であり、テーマでもあると思います。でも、きっかけのひとつは、相手に触れたい。と切に思うことかな、と私は思います。 物語の中、穂高君が真紘君に会いたい、触れたい。と思う場面。まさに、恋をしている。そう実感しました。 だから、突如大胆に「みずぎわ」を飛び越えた真紘君と慌てふためく穂高君のプールでのシーン。綺麗ごとで済まさず、心だけでなく身体を触れ合うまでを描かれたことで、ふたりの想いの臨場感が読者にしっかりと流れ込んできたのだと思います。 主人公ふたり以外の登場人物たちも、みな魅力的でそれぞれにきちんと背景を感じる。物語の世界でちゃんと生きている。そんな気がしました。 屋上での心が透けるやり取り。何故か涙が出てしまいます。いつもながらの繊細な千周ワールド……今回もじっくりと堪能させていただきました。素敵な時間をありがとうございました!
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あーるさ~ん!!!(≧▽≦)♪ すごい! いつもながらの圧倒的な読解力と 選び抜かれた繊細な言葉たちによって紡ぎ出された、 おそらくは本編よりもよほど読者さまの心を惹き付けるであろう、 素晴らしいレビューをお寄せくださってありがとうございます! そして何より、この200ページもの長編に 最後までお付き合いくださったことに改めて感謝申し上げますm(__)m 昨日、いただいたぺコメのページがあれよあれよ(笑)と進んでいくのを拝見するにつれ、 ああ、一気にお読みくださっているのだなあ、と嬉しくなりました(^^) 本作は、あーるさんのご指摘通り、BLであると同時に穂高の成長譚でもあります。 まだ、
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千周さん、こんばんは! レビューへの丁寧なお返事ありがとうございます!創作のお話などを伺えるのがとても嬉しいです! でもでも、本編より……なんて過分なお言葉に恐縮しまくりです(>ω<) みずぎわ、最初にお伝えしましたが、やはりほんとーに、好きなお話でした。 屋上の降り注ぐ日差しの下、干されたシーツが風にはためく。その隙間からチラチラと見え隠れするように溢れる気持ちが映る。そんな彼らの気持ちを慮りながら読むのはとても心動かされる幸せな時間でした^^ さてさて、千周さんが気になっているというくだんのシーン(笑) レビューでもお伝えしましたが、ふたりの恋愛が絵空事ではないリアルさを
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