栗印 緑

サークル内企画よりお邪魔します。取り急ぎ、第一話まで拝読しました。 率直に一言で申し上げると、たいへんにミステリアスな作品だなと感じました。それが最大の魅力でもあり、良さを損なってしまっている部分でもあります。 例えば一番最初、冒頭の部分。ヒミが幻視という異能を持っていることが分かれば難しい文章ではないのですが、それが提示されない状態で初手に読むと、幻という単語の意味の広さも手伝って、非常に難解で不可解に見えてしまいます。読者としては興味をそそられると同時に、疎外感も感じてしまうことになります。 同様に、主人公のヒミ自身の行動も不可解な部分が多くあります。人の目を刺すというのはかなり特異な行動ですが、なぜそうしたのかは語られずに話が進みます。 また、クゼの部屋に侵入したシーン。我に返ったヒミは「いまならまだ不法侵入と窃盗の範囲で済む」と考えます。が、番号錠を解いても、中身を持ち去っても、その範囲から逸脱することはないはずです。読者としては、ヒミは「何に」はっとしたのだろう、と考えてしまいます。さらに、その緊張状態の中で眠り込むのも不可解です。そして、ダガーを手にして真っ先に「これは考えて振るうものだと自戒」する不思議。クゼの痕跡を追っているのに、なぜ彼がこれを厳重に管理して保管していたかを考えないのはとても不可解に見えてしまうのです。結果、せっかくの魅力的な主人公への感情移入がしにくくなってしまっています。おそらく理由があるのだと思うのですが、主人公が持っている情報を読者に開示しない、という手法は、短編では有効ですが長編ではかなり扱いが難しいかと思います。 とはいえ、それがあっても、いやそれさえ含めて、独特のミステリアスな雰囲気が非常に魅力的な作品です。現代日本風ながら、携帯電話が存在しないことが明示されていたりして、明らかに「別の」世界であることが分かります。オウマの存在から、幻視者はヒミ一人ではないこと、他にも様々な異能が存在することが示され、異能戦が楽しみになります。 そして、幻視を使った戦いの熱いこと! 頭脳戦で戦局を変える面白さは、まさに異能バトル。良くも悪くも現実に影響しない幻のクゼの傍観ぶりが、時にコミカルにシーンに花を添えますね。 先が気になる作品がまたひとつ増えました。自信をもって彼らの世界を描き切ってください。応援しています!
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栗印さん、読んでいただきありがとうございます。 やはり読者の意見指摘は必要だなと実感しました。いま行っている推敲の参考にさせていただきます。 企画に参加してよかったです。 稚拙なんでないかと悩んでいたのですが、そうでもまず書ききるという目標に向けて頑張っていきたいと思います。 ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
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こちらこそ、素敵な作品を読ませていただいてありがとうございます! 1000字の字数制限がなかなかに強敵で、引用を使っての指摘部分に比べて、魅力についてあまり語れなかったことが悔やまれます……。世界観というか空気感というか、この独特の感じ、大好きです! ヒミちゃんのキレッキレな異能戦もめちゃくちゃかっこいいし……カナメくんもこれからの活躍が楽しみです。 続きもゆっくり楽しませていただきますね!
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