昭和初期、レトロでモダンなミステリー! セピア色の時代にタイムスリップしたような物語の空気が漂っています。 少し懐かしいような人の心までも、その時代を生きている人なのです。 神戸のお菓子屋さんに居候していた、老人が殺された。 犯人の目星はつき、警察にすでに拘留されている。 容疑者は男爵の子息、小達。 プレーボーイで軽い男。 お金持ちの坊ちゃんが、なぜしがない老人を殺したのか? ひと癖もふた癖もある探偵・加藤の唯一の友人であり、理解者と自負する刑事の「私」の依頼で二人三脚の捜査が始まる……訳ですが、 そんななか、可愛らしい女性が加藤の事務所に事務員として採用されます。 鼻唄を歌いながら、片付け物をするような物おじしないのびのびとした気質の光子は、 物語を和ませつつ、ピリリと引き締めています。 殺された老人も、犯人の動機も……、そして犯人と関わっていた人物の心情が、どこか懐かしく心惹かれるのです。 恩に感じたり、我儘な過去を引きずったり、一方では女性のしたたかさ、そんなことさえも今は失われた時代のもののような気がして、ぐっと心を掴まれます。 最後まで解けぬ謎がひとつ残されているのも、この作品がいつまでも心に残るお話になっている要因のひとつのような気がします。 「あれ」には何が隠されていたのか。「あれ」はどこに……? 幸せを手にした女性が、過去をどうするのか、それは明かされぬまま……。それがとてもいいのです。 加藤・「私」・光子、の新たな事件への挑戦、期待してしまいます!
3件

この投稿に対するコメントはありません