心の恋愛シリーズ五作目!心の恋愛って素晴らしい・・・
 シリーズ五作目。エブリスタのコンテストでも注目されたのが記憶に新しい。  このシリーズを簡単に説明するなら、すでに若くはない高校教師の男女、袖井かの子と津曲の「心の恋愛」の物語である。  かの子には家庭がある。だが夫との間に冷たい風が吹いていることが、五作目にしてハッキリと語られる。  家庭を持ちながらも同僚教師の津曲に思いを寄せ、津曲は彼に心を寄せるイギリス人女性を気にかけながらも、夫のいるかの子への思いを募らせていく。  そしてふたりの共通の居場所である寿司屋の主人とその妻との交友が、小説の展開に絶妙なアクセントをつけている。  今回、ふたりの間には、張り詰めた空気が流れる。  お互いのことを思いながらも、どう発展させていったらよいのか分らないもどかしさ。  それが津曲のイギリス出張で一気に表面化。  お互いになにか満ち足りないまま毎日が過ぎていく。  不倫の小説ではない。  何度も書くが、「心の恋愛」の小説である。  今回、かの子を中心に、恋をする心の動きが丁寧に描かれる。心の動きだけで一気に読ませる作者の巧さは堪えられない。  今回、ふたりの間の緊張が描かれたことで、心の動きで描かれる「恋物語」の魅力が一気に高まったと思う。  心の恋愛がいかに魅力的なものか。  小説の終盤。  ふたりが出会った時に交わされる会話。さりげないやりとりの中に描かれる熱い思いの描写がハッキリと教えてくれる。  読み飛ばすなんてやめて欲しい。  会話、動作、全ての文章を心で感じてほしいと思う。  次回作が待ち遠しい。
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