軽やかに重苦しく、そして濃厚に綴られる狂気が堪らなくリアルで、見事としか言いようがありません。この手の物語には特殊な感性を持っているため、以下の感想はあくまで主観的なものであることを断っておきます。 目を見張るのは、自ら狂っている事を自覚する主人公の切なくも滑稽な様です。彼はどこまでも一人の人間で、等身大で、舞台となるのは現実世界だからこその、リアルさと滑稽さ。ついつい一緒になって狂い笑いをしてしまう。作者の持つ狂気への愛が色濃く投影された秀作だと言えるでしょう。個人的には異形より好きですね。 論理性を度外視した、オーソドックスとは程遠いにも関わらず異常なまでに読者を引き込む時間の操り方と、主人公の心理描写の濃厚さに類希な才能を感じます。勿論読む人間を選ぶため手放しで勧めることは躊躇われますが、個人的には本当に凄い作品だと思います。 改善点としてオーソドックスに指摘できるのは、特に序盤、台詞が誰のものかいまいち分からない点です。誰が喋っているのか、思考を巡らせながらでは普通の読者は疲れてしまうでしょう。かといい、誰がどうしたと説明を加えてしまっては味が落ちるのも事実。アドバイスとしては、場景、仕種の描写をもっと密にしてみると良いかもしれません。場の空気を損なわないよう、むしろより濃くしながら誰が何をしているのかを密に描いてみては。 他の改善点は、一概にこれが良いとは言えません。構成も心理も文章もえらく偏っていて、それが良い人には良いし、分からない人には分からないと思います。あとは、作者様が何をどう描きたいかでは。『どうしたいか』の相談ならば、力の限り助力しますのでご一報下さい。力になれるかはわかりませんが^^; ではでは!
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