夏月 海桜

能力モノということに惹かれて拝読した本作は、いわゆるファンタジーでも無ければ、悲劇モノでも無い。特殊能力という作品は、得てして、主人公が自分の能力に悲観したり、周囲から蔑まれたりすることが多い。しかしながら、本作は、悲観も蔑みも憐れみも無い。実に爽快なラブコメである。ラブの部分が少ない。と作者様が仰有っているが、純愛や大人の恋愛ではないのだ。学園恋愛であり、コメディもあるのだ。全く気にならない。むしろ、主人公や脇役の生活がしっかりと出来上がった読んでいて安心感のある話だった。さらに、特殊能力が有っても、それが目立つ事なく、さらりと溶け込んでいるのが巧いと思える。主人公が人並み外れた外見や雰囲気などを持っているから、余計に溶け込んでいるのだろうか?その辺は作者様の腕の見せ所か。また、固定キャラも巧く書き分けてある為に、会話だけが続いても、誰が話しているのか良く解るのが、良い。更に。作者様は、博識と見受けられる。バイオリンや合気道など、丁寧に説明されており、無知な私にも解る事が嬉しかった。どのようなシーンも描写が細かい為に想像しやすいのも、作者様の腕の良さ、という所か。次回作も期待出来る作品に出会えて感謝する。

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