然らん春を覚えた男女の有り様
かの子と津曲のさりげなさから始まり、時々さりげなくいられないふたりを綴る再春小説の第五弾。 さらさらとした印象に終始包まれながら読了致しました。 今作で感じたふたりの関係性を「さらさら」とわたしは現したい。 ふたりが触れ合うと音が立つ。さっぱりとした清らかな音。それが指でも、心でも。 ひとり相手を思っていると胸がつかえそうに見えるのに、ふたりが重なると、まるでつかえるということを知らないかのように、さらさらとふたりは歩む。 さりげない言葉の数々が美しく余韻を残しながら、次の気持ちへと読者をいざなう。 物語をある方向へふたりが転がし始めた今作、次の季節、ふたりがどのような心模様や在り方であるのか楽しみである。 一年巡れば再び季節はやってくる。再びやって来た春であっても、それは新しい春。季節の変わり目というものは、新しいことを始めるのにちょうど良い。 今後のふたりの物語の行方が楽しみで仕方がありません!

この投稿に対するコメントはありません