小池正浩

『?』から『!』へ 落下するダブルミーニングの陥穽
──ああ、血だ。この死体から溢れ出る、血。その赤は無数の水玉模様を、いたるところに形作っている。──  唯一の出入り口が、人の頭よりはるか3メートルは上部に位置する部屋。そのなかに、刃物で首の後ろを刺された、あきらかな他殺屍体。  不可解にしか見えない特異な状況下、突発的に発生した異常事態だったのだが……。  誰が犯人なのかは問題ではない。  〝あいつ〟がそこを自由に出入りしたことは確実に間違いないのだから。  なぜなら──。  エッジのきいた題名(タイトル)、無駄なく隙もない構成と文章表現(センテンス)、大胆かつ奇想天外な着想のメタ・トリック、すべてが巧みで秀逸なのもさることながら、先に引用した不可思議な光景の描写は、とくべつファンタスティック。  最後の一行を目にしたとき読者はきっと、一瞬で『?』から『!』へ、急激に落下するようなトリップを体験することになる。

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