清水 誉

実際ありそうだけど、ない事を願わずにいられない
 子供目線で綴られる物語は、幼い子供から見た、冷たい世間。  女手一つで子供を育てるのは大変だろう。ましてや身内に頼れる者が居ないのならば尚更だ。  可愛い我が子の笑顔を絶やさぬように頑張れるのは、自分が笑っていられる内だけ。  膿の溜まる世の中で、母の心は少しづつ壊れていく。一体何があったんだろう。職場でトラブルがあったのだろうか。保育園での保護者達の冷たい仕打ちでもあったのだろうか。  心の暗い落とし穴に落ちてしまったら、病気だから治ると言われても中々治るものではない。  辛かっただろう。不甲斐ないと自分を責めてしまうだろう。  我が子の首は細かっただろう。産みたいと願い、愛おしく育てた子を、自ら。  正直、レビューを書いている今でも涙が出てしまう。今後、似たような報道があがれば、この作品を思い出してしまうだろう。フィクションだと分かっていても、報道を見てこの親子の冥福を祈ってしまうだろう。  最後に訪れた神さまの行為も、汚い大人に荒らされてしまった。  救いようのない本作は、読者の反面教師となるだろう。自分はこの中の汚い大人の仲間になるものか、と。  汚い大人よ。この作品を読むといい。お前の顔はこう映るんだ、と言いたい。
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