紅屋楓

ゆるやかに還る
突然、不慮の事故により身体を動かすことができなくなった主人公。 いくつものタラレバを思わずにはいられない。 しかし、やがてショックや怒りは通り過ぎ、諦めの境地に至る。 家族だけでなく少女や運転手、事故の関係者たちが見舞ってくれる優しい人々なだけに辛い。 また時間は確実に進んでいる。弟の受験、それに多くの時間を割く両親。兄でありながら競うこともできず、追い抜かれていってしまう。 そんな中で主人公は病室の窓から覗く木に安らぎを見出す。毎日話しかけ、木は風に揺れて返事をくれる。彼らの結びつきは精神的にも徐々に強いものになっていくが…… 主人公が木に、木が主人公に。 ゆるやかに、穏やかに下っていく。 (昇っていく、がいいのか) 一つになる様は、まさに「土に還る」。 この先も誰もが彼が木とともになったように、人間は自然とひとつに還っていくのかなと思いました。
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レビューをありがとうございます。 諦観は溢れても、バッドエンドにはしたくなくて。 主人公は諦めたまま逝くのではなく、そこに違う形の幸せを感じてほしかったです。 周りの情景も、周りの感情も、ほとんど取っ払ったものなのでどんな印象を持たれるかが私の中では気がかりでした。 『死』を題材にするのは難しいですね。 もうこれ以上、テーマとして『死』を書けないだろうし、書きたくないという気持ちもあります。 これで終われて良かったです。ありがとうございました。
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