Polaris

参りました。
 現在自分は第二回氷室冴子青春文学賞に応募しているので、第一回ではどのような作品がノミネートしていたのだろうという興味から拝読致しました。  結論から申しますととても巧みな小説だなという感想を持ちました。  審査員講評には「『成長期の自分の身体に対する違和感』を、『手がいつのまにかベツモノになっている』と表現するのは、とても小説的だという意見もあった」とありますが、正にその通りだし、更に言うならこれは小説でないと成立し得ない表現だなとも思いました。何故なら、講評ではまた「視覚的にイメージしてみるとちょっと美しくないというかグロい気持ち悪いという声も出た」とあったように、仮にこれを実写なり漫画なりのメディア化(視覚化)ししてしまうと多分かなりインパクトのある絵となって、読者の多くはそっちに気を取られて『成長期の自分の身体に対する違和感』という本来伝えたいテーマがボヤけるからです。誰も主人公の手が入れ替わったことに気付かない描写が繰り返し出てきますが、これも視覚化すると些か無理のある設定になるところを、小説だと思春期の少女の誰からも大事にされていないのだという心情が上手く読者の目線とリンクして気にならなくなります。  本作品は小説という枠組みの中でしか出来ないことが為されている点で非常に純文学的でもありますし、総じてまさか無料でこのような読書体験が出来るとは思っておりませんでした。  と共に、このレベルのものを書いても大賞はとれないのかと思うと何だか目眩がしてきますね。。。
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