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Spoon Man
野井田 区論
2019/7/14 1:39
A Spoonful of Sugar
まずは一言だけ言わせてください。拙作へのアンサーノベルを水熙さんに書いていただけるなんて最高の贅沢を享受して、僕はもう今なら切匙で腹をも切れそうな気分です。野井田 区論です。最高の誕生日プレゼントになりました! そもそも本作で取り上げていただいた『Straw Man』は、言葉遊びを使った作品が書きたくて作ったものなのですが、その主人公のモデルは何を隠そう我らが水熙さんなのです。 普段から物事に対して少し斜めから切り込んでいくスタンス、読者を搦めとるように仕組まれるダブルミーニング。こう書くとまるで悪口のように聞こえるかもしれませんが、そんなつもりは全くなくて、むしろ僕はずっとこうした水熙さんに憧れていたのです。 つまり『Straw Man』は水熙さんへ宛てたファンレターのような作品でありますから、ちょっとここで冷静に考えてみてください。推しにファンレターを出します、そしたらなんと返事が帰ってきました。するとどうなるでしょう。ええ、そうですね、発狂しますね。区論さんは今まさにここです。李徴です。野井田 李徴になりました。野井田 李徴になってそんで野井田 虎です。何言ってんだ俺は。 しかも、もしそのお返事がとてつもなく含蓄ある言葉で彩られていたとしたら、皆さんは呑気に袁傪とお話なんてできるでしょうか。 本作『Spoon Man』の本質は、作中でも何度も語られる「救い」です。そう、この物語は救いの物語なのです。 人はいつも何かを捨て、受け流し、また失いながら生きています。つい、僕はそうして手の届かない場所へ行ってしまったものばかりに気を取られ、絶望して嘆いていました。でも『Spoon Man』はそうではないと力強く教えてくれます。たとえそれがすでに失われていて、僕らに照らし出せるものがほんの虚構の影に過ぎないとしても、いつかまた出逢えるはずだと足掻くことは無駄じゃないと教えてくれるのです。 つい先ほど『Spoon Man』は救いの物語であると書きましたが、これは悲しみを携えながら泥を練り上げていく苦しい巡礼の物語です。しかしその先に光があるはずだと信じることは、苦い薬を飲むときに加えるひと匙の砂糖のように、きっと僕らを導いてくれるはずだと励ましてくれる。そんなメッセージが込められた、水熙さんの絶妙な匙加減の上に成り立つ優しい物語なのでした。
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