純文学の作者が書く魅力的な小説  感想その一
 作者は純文学の立場から、エブリスタで『はるのおと』シリーズを発表している。  第一部は六エピソードで終了し、現在は第二部に移り、第二エピソードまで進んでいる。  まず第一部。  仙台市の大日如来堂前の寿司屋「はる道」を共通の舞台に、夫と子供のいる高校教師の袖井かの子と同僚教師、津曲克俊の秘められた恋をテーマにしていた。  寿司屋の主人の玄道昭三と妻を狂言回しに、かの子と津曲の間のささやかな波乱や心の動きが丁寧に描かれていた。  第二部も登場人物は変わらない。 第一部からは十年近い歳月が流れている。 第二部では、かの子や津曲の周囲の人々を語り手の主人公に、彼らが少しずつ成長していく様子が描かれている。 今回の語り手は、津曲の姪の小夜子である。 小夜子の視点でかの子や津曲、寿司屋夫婦が語られ、彼らへの思いが語られる。 第二部の一を紹介した時には、氏の作風にいい意味での通俗性が加わり、読みやすくなったと語った。今回もその評価は変わらない。
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