文谷ふみ

悪意の代償
読み手の想像力を否応なく刺激する、ゾッとするほど淡々とした描写と、産まれたばかりの千恵を愛しむやわらかな表現が交差したとき、圧倒的な「おぞましさ」が襲いかかってくる、純然たるホラー作品。 キーとなるのは知宏だと感じた。一見、極悪非道な人間ではないし、突出した悪役ではないように見える。しかし、読み進めていくと、段々と「あれ?」と思うことが増え、不信感が積み重なっていく。 夫婦であり親である視点も妙に生々しく、非現実的な現象を日常に近づけているのが、見事だった。 「悪魔事件」の根底にあるものや、原因。そんなのは一言で表すことはできないが、夫妻の振り撒いた悪意の代償だったのではないだろうか。

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