居場所のない家族の切ないけどあたたかくなる小説
 武藤氏はエブリスタで既に多くの受賞実績があり、長編『noise 月の帰還』も2000☆を超えている。  本作は一人称で書かれた「青春小説」と敢えて呼びたい。  文化住宅に、離婚した父親と二人で暮らす少女。少女の目には、いつも一人の女性が見えている。  静かに部屋の隅で正座している女性の正体は・・・  主人公の少女が、父と二人で暮らす文化住宅を嫌っている設定が秀逸である。  大嫌いな文化住宅から出て別のところに行きたい・・・  だが母方の祖父母の家に行っても少女の居場所はない。  既に少女に対して愛情を失い新しい家族を大切にしている母親のもとにも居場所はない。  少女以外の登場人物の出番はあまり多くないのだが、少女とのわずかなやりとりを通じて彼等のキャラクターが明確に伝わり、それが少女の置かれた立場を鮮明に浮かび上がらせる。  ここで、部屋の隅に正座する女性の役割が俄然大きくなってくる。  この小説は、居場所のない少女が、自分達の文化住宅に居場所を見出した「孤独な人」との交流を経て一歩一歩、成長していく青春小説である。  丁寧に書かれていて無駄のない文章。出番は少なくても小説の構成上、大きな役割を担う登場人物。  特に部屋の隅に正座する女性の存在が、「秀逸」を通り越している。  詳しく書かれてはいないのに、どの登場人物よりもキャラクターがハッキリと浮かび上がり、小説全体の完成度を高めている。  小説を投稿している人は是非読んで欲しいと思う。   おそらく得るものは大きいと思う。自分も勉強させて頂いた。  読者の立場から申し上げれば、心が温かく前向きになれるステキな小説である。  大好きな小説だと申し上げたい。  
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倉橋様  拙作にレビューを頂き誠にありがとうございます。   読んでいて泣けてきました。  作品をこんなにも素敵な文章で飾って頂き、心より感謝申し上げます。    倉橋さんの今後益々のご健筆を御祈り申し上げます。      
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