確かな文章力と斬新な価値観
大変面白く、質の高い小説でした。 冒頭で、いきなり激しいライブハウスのシーンが描かれています。 バンドものかなと思いきや、次の章からは、打って変わって日常的なシーン。 見た目は平凡、そしてテンションもどちらかというと低いように見える主人公の鈴木が、実は常に非日常を求める冒険フリークだという、斬新なギャップを持つキャラクターであることが、静かに描かれ始めます。 その鈴木と、とにかく平穏な日常を守りたい真島の人生が、たまに交わりながら物語は進みます。 おそらくいずれ冒頭のシーンに行き着くのだろうなという予感を胸に、一見ライブハウスとは全く関係無さそうな二人がどのような経緯であのシーンに行き着くのか、とても期待しながら読みました。 読み進めるごとに、鈴木の「冒険好き」っぷりがどんどん明かされていき、斬新な価値観だなぁ、面白いなぁ、ととても興味深く読めました。 真島の章は、途中少し退屈かなと感じましたが(やはり平凡なキャラクターというのは小説として退屈なんだなぁと改めて思いつつ)、でもそれが次第に鈴木に巻き込まれていくと、「退屈と思ってごめんなさい!!」という気持ちになりました。笑 その退屈ささえも、この小説の重要な構成要素なのですね。 犯人に関してはわりと早い段階で見当がついたので、ミステリー部分は少し弱いのかなと思わなくもないですが、それ以上の面白さがストーリー自体にあるので、ミステリー要素はこのくらいでも充分だと思います。 (メインジャンルはヒューマンドラマにしてミステリータグを付けても良いのかも?と個人的には思いました。) タイトルに名前が入っているのは「鈴木」だけでなんとなく据わりが悪いように感じていましたが、クライマックスを迎えると、紛れもなく『冒険を愛する鈴木と日常の崩壊』!! これ以上のタイトルは無いでしょう。 冒頭のシーンが再び出てくる頃には詳細を忘れているので、そうだこの後にあれも起こるのか、これも起こるのか、と思い出しながら、次々追い討ちをかけられる様を見ていくのが本当に面白かったです。 続きます。
2件・3件
作者様は極めて文章力が高く、それは冒頭のシーンでまず遺憾なく発揮されています。 冒頭でこの描写力に触れると、続きも信頼して読むことができますし、実際全編に渡って細やかに行き届いた描写は素晴らしいです。 ストーリーの流れも、けっこう蛇行するのにごく自然に繋がっていき、全てのシーンが面白かったです。 端々にメッセージ性も込められていますが、それもしっかりとキャラクターが描かれる中に織り込んであるので、「メッセージです!」という主張がなくてスッと入ってきました。 感想も伝えたいしオススメもしたいしで、定まらないレビューになってしまってすみません。 とても面白かったです。 書籍として売っててもおかし
1件2件
アンジェラさん。 長い作品を最後まで読んで頂き、ありがとうございます。推敲をして下さった事、こんなに素敵なレビューを書いて頂けた事を含め、心から感謝しています。 とにかく自分のやりたい事を詰め込んでみた作品です。というのもこの作品、ストーリーやキャラクター、話の構成、表現したいテーマなどは元々別の作品として書こうとしていたものでして…… それぞれを上手く描く時間も自信もなかったので、だったら一つの作品にしてしまおうと挑戦してみました。表現したいテーマとエンタメの両立。逆に苦労させられた感が否めない(笑) ミステリー要素については、初稿の段階では更に薄いものだったんですよねぇ。ナツイチのテ
1件

/1ページ

1件