有栖川 露陰

自作の解説をするのは野暮かも知れませんが、創作にこめた思いやら小ネタやらをくどくどと語りたい時もあります。 拙作『黎明のカイゼリン』のヒロイン、ザビーネお嬢を何で「ザビーネ・マリア」と書くのか? 何で彼女が大声を出すと「狼の咆哮」に例えられるのか? といった事とか。 一番目の理由は至極単純。ザビーネだと『機動戦士ガンダムF91』に登場する敵の男性士官ザビーネ・シャルのイメージが個人的には強いからです。 ちなみに、上昇思考で気品があり、それでいて冷酷な隻眼の士官という彼の人物像はヴィスコンティ監督の『山猫』のアラン・ドロン演じるシチリア貴族タンクレーディに似てる気がします。 宇宙世紀には他にアナベル・ガトーとか女性名の男性がちらほらいますね。 ちなみに、現代では変わった名前に思われるであろう『機動戦士Vガンダム』の敵士官タシロ・ヴァゴ大佐のタシロですが、 プロイセン王家ホーエンツォレルン家の祖にタッシロという人物がいますので、由緒ある名前といえるのでしょう。閑話休題。 二番目のザビーネお嬢と狼についてですが、 ザビーネお嬢は兵士たちの勝利の女神にして死に導く妖女でもあります。 よい意味でも悪い意味でもワルキューレです。 ワルキューレに因む北欧神話の隠喩に「ワルキューレの馬」というものがあります。 現代では、そう言われると輝かしいペガサスみたいな天馬を思い浮かべるかも知れませんが、その正体は狼なのです。 戦場で兵士たちの亡骸を喰らう自然の掃除人たる狼が、勇者たちを天上のヴァルハラに導くワルキューレと結びつけられているのです。 そんな訳で、神聖にして不吉なる戦場のアイドル、ザビーネお嬢は狼のモチーフを被せているのです。 黒髪と烏の関係も、やっぱりそんな恐るべきワルキューレとしての側面を象徴するものです。 しだりおの秋の夜、ながながと呟き散らしてみました。
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女性が戦場に居て不便はないのか?とも悩みますが、中世、近世と戦場には兵士の妻やら娼婦やらがぞろぞろついていた訳ですし、19世紀前半には従軍女性酒保商人も活躍してますから、まあ、大丈夫なのかもと自分を納得させてます。 『女騎兵の手記』でもナポレオン戦争で男装して戦い抜いた女性ロシア騎兵将校の体験が綴られてますし。 戦場における女性史についてまだまだやっぱり沢山の勉強が必要ではありますね。
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