様々な物語と技巧を秘めた一番美しい抒情詩・・・
 未知乃みちる氏は純文学の立場から、意欲的な作品を次々と発表している。  この人の特筆すべき点は、「青春小説」「恋愛小説」「官能小説」などあらゆるジャンルの小説を、純文学のスタンスで発表していることかと思う。  この小説は一篇の抒情詩である。  いつもの文体とは意識的に変えた流れるような一人称は、やがて時計が止まったような不思議な空間をつくりだす。  この空間の中で展開する物語は、この小説を読む者に透き通った清い涙をもたらすことと思う。  だがそれだけには留まらない。  どうか何度もこの小説を読み返して欲しい。文章では細かく語られない無数の物語が隠されていることに気がつくはずだ。  そしてこの隠された物語自体が抒情詩であり、無数の抒情詩が重なり合って、僕らの体を貫くほどの感動をかたちつくっている事実を知ることになる。  この作品は、未知乃氏が、「純文学」の立場から書いた大きくて深い抒情詩である。読み返せば読み返すほど小説の世界が広がり、感動の世界が深まっていく。  純文学は、ある意味、技巧の文学である。  未知乃氏は一篇の抒情詩を僕らに提供しながら、実は壮大な技巧を展開している。  この点を僕は強調し、深い敬意を表したいと思う。  僕は純文学こそ小説の基本と考えている。以前にも書いたことだが、ミステリーにしてもライトノベルにしても、純文学という土台があって成り立っている。純文学が滅びれば、小説自体が崩壊する。  様々な工夫で純文学を守ろうと努力している未知乃氏は、今後、どのような小説を読ませてくれるのだろうか。  読者として、心より期待している。
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倉橋さん こんにちは、サカヤです。 素晴らしいレビューをありがとうございます。 いただくたびに、嬉しいのと同時にもっともっと素敵な作品を書きたいと意欲をかき立てられます。 ライトめを目指したのですが、なかなか……。 ちゃんと抒情詩的な感覚をお届けできて安心しました。 フィクションには、少なからず抒情が必要だと思っています。ジャンルを問わず。受け取り方は読者さまへ委ねても、作者の意思を込めないと創作は成り立たないと常々思います。 技巧が自分にあるのか、自分では量れませんが、そのようにおっしゃってくださってありがとうございます。 書くときに、思い付く限りの様々な要素を詰め込みたくなります。今回、

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