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遠峯 梓
りかりー
2020/2/17 0:54
りかりーと申します。いつも応援ありがとうございます。お礼にミニ話をプレゼント! 『若恋』蒼銀の恋~銀~ 焼け落ちて崩れていく邸を見上げながら、 「どうか、……真由、あいつと幸せに」 俺は、やっと、そう思えたんだ─── 人間にはわからない僅かな鉄錆びの臭い。 臭いを辿ると、窓際でぼんやりと外を眺めている女生徒がいた。 「……今の問題を、橘 」 「公式を当てはめて。次、花水木」 授業終了の鐘が鳴り、HRが終わっても、この教室の窓から迎えの車が見えても、それでも立ち上がらない。 俯いていた彼女はやがて帰って行った。 自分をこんな目にあわせる者がいる家へと。 ※※※ 月が丸くなる夜。 狼の姿になり、建物の屋根を駆け抜け、宙を跳んで古い屋敷の庭に降りた。 「おまえはどうして儂の言うことを聞けないのだっ!」 聞こえてくるのは鈍い音と呻き声。 漂ってくるのは鉄錆びの臭い。 「アレと同じ眼で儂を見るなっ!」 発狂したように叫ぶのは彼女の父。 逃げた妻の代わりに娘を打ち据える。 俺は狼の姿で彼女に会う。 痛々しい傷をさらし、声も出さずに泣く彼女のそばに寄り添う。 「……オオカミさん。このくらい平気よ。お父さんはわたしを思ってくれてるから叱るんだもん。……心配してくれてありがとう」 彼女は狼の俺にいつもそう言う。 いつか、この地獄の日々が終わる日がくると信じて。 ※※※ 彼女が学園を休んだ。 こんなことは一度もなかった。 そして、その次の日も彼女の姿は教室になかった。 彼女の部屋へと降りると、服は裂け、まぶたは目が開かないほど腫れ上がった彼女がいた。 「わたし、……お父さんの本当の娘じゃ、ないんだって」 ああ、知ってた。 彼女はまるであの男に似ていない。 「だから……わたしのこと憎いんだって。……もう、こんなの耐えられないっ!オオカミさんっ、お願い、わたしをここから連れ出して!」 泣いたことのない瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。 彼女がどれだけ苦しんだか知っている。 俺はずっと彼女を見ていた。 狼の姿の俺にも怖れず、負った傷を手当てしてくれた優しい娘。 彼女がいなかったら、俺は生きてはいなかっただろう。 初めて彼女は俺に助けを求めた。 「ああ、もちろん拐ってくよ。おまえを苦しめるすべてのものから守るためにな」 蒼銀の恋~銀~
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遠峯 梓
2020/2/17 20:37
りかりーさん。 ありがとうございます。うれしいです。
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