夜宵氷雨

『暁闇に春風ぞ吹く』完結しました。 連載開始からちょうど1ヶ月。これで完結です。 お付き合い頂き、ありがとうございました。 終章部分については、必要ないと思われる方もいるかもしれません。 最後のエピローグを除けば、歴史としてわかっている部分や、『平家物語』のほとんど現代語訳です。 けれど、最後のエピローグを書くためには欠かせない部分だと思って加えました。 『平家物語』がベースになっている「粟津」「離別」「最期」は、もっとシンプルで、ほとんど現代語訳しただけの状態でした。 ですが、この3話については、今回の掲載にあたって、心情描写などをある程度加筆しました。 『平家物語』そのままの人物描写では、この作品で書いてきた巴や義仲のキャラクターと齟齬が生じるからです。 行動を変えてしまうと、それは歴史改変物になってしまうため、行動はそのままですが、心情描写を加えることで、キャラクターのブレを無くしたつもりです。 エピローグにあたる「鎌倉」は、どうしても書きたかった話。 巴が頼朝に捕らわれて鎌倉に送られたなら、大姫とも出会っていて不思議はないかなと。二人が、義高のことを話すのって何かいいなと。 そして今回、「挙兵」としてまとめてしまった部分こそ、源義仲の人生そのもの。歴史の表舞台での活躍部分です。 本来であれば、この部分こそ小説として描いて初めて、義仲や巴の小説と言えるのかもしれません。 これを書いた当時の私には、そういった歴史的な流れを書くだけの力量も知識もありませんでした。 それは今も変わりません。 この作品では、『平家物語』ベースの部分は、最もよく知られる覚一本(岩波文庫版)を元にしています。 それは単純に、これを書いた当時、学生時代のテキストとして購入した岩波文庫しか手元になかったからです。 本当は、『盛衰記』や『闘諍録』などの読み本系の異本なども取り入れたかったのですが、そこまで入手して読み込むための、経済的・時間的な余裕がありませんでした。 義仲の表舞台での活躍を書こうとすれば、そう言った異本はもちろん、何より作中に登場した九条兼実の『玉葉』や慈円(道快)の『愚管抄』は必須。もちろん『吾妻鏡』も外せません。 中には、翻刻されていない史料もあります。 いざ書こうとすれば、調べ物だけで膨大な時間を要するでしょう。 ですが、いつかは書きたいと思います。
2件・1件
特に、北陸宮や信救(覚明)との出会い(巴に取っては再会)、上洛後の松殿家との関係などは、想像するだけでワクワクします。 治承三年の政変や以仁王の挙兵など、義仲上洛前の都での話も、必要になるでしょう。 もっともっといろいろな物語を書いて、手応えを感じた時には、最初から最後まで、巴と義仲の物語を書こうと思います。 その時には、少女小説という枠から離れたものになるかもしれません。 もちろん、巴達が信濃で活躍したり、上洛後の巴が都で活躍するような、事件解決型の物語も書きたいです。 その日まで、彼らとはしばらくお別れです。 いつかまた、彼らの物語をお目に掛けられることを願って。

/1ページ

1件