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noise 月の帰還 /第一部・第二部
倉橋
2020/3/6 14:25
更新が楽しみだった良質のエンターテイメント!①
武藤経氏の『月の帰還』が、第二部を以て一先ず完結した。 エブリスタの中で、この作品は毎日の更新が本当に楽しみだったので、完結と知って一抹の寂しさを覚える。 僕の読んだ範囲では、この小説は良質のエンターテイメントである。 ロシアから日本に秘密裏に亡命してきた以上に鋭敏な聴覚の持ち主、ユウ。 彼女の特殊能力には、外国の諜報機関も注目しているらしい。 関西の高校に入学したユウは表向き男子を装っているものの、ユウの日本滞在に関わっている公安関係者の家族である侑真と知り合い、ふたりの思いは恋愛感情に発展していく。 だがユウと侑真の周囲には不穏な影がつきまとう。侑真はフェンシングの試合を妨害され、ユウは怪しげな人物達につきまとわれ、何度も身の危険を経験する。 国際関係、政治の世界の利害、学校内の対立・・・様々な要素がもつれあい、二人を危機に追い込む。 だがふたりの思いと絆は、次々と舞い込むアクシデントを乗り越え、ますます強くなっていく。 非常にスケールの大きな小説である。僕は武藤氏にご迷惑をかけることも恐れず、勝手に「青春大河ロマン」と名付けてしまった 二人の恋愛がメインストーリーであるものの、次から次へと起きる危機に手に汗握るサスペンスもある。また青春小説らしいお笑いや友情のシーンもちりばめられている。 これだけでも十分魅力的である。 だがこの小説の一番、秀逸な点は前述したとおりである。 国際関係や政治の利害、学校内の対立という様々な要素を、武藤氏の絶妙な手腕で整理し構築したことにある。 凡百の投稿者ならストーリーがあちこちに跳んで把握できなくなるところである。 実際、そういう小説は多く読んだ。 武藤氏は、こうした様々な要素をバラバラに配置するのではなく、ユウと侑真を中心に置き関連しあって絡ませることで、複雑なストーリーにも関わらず、非常に分かりやすく展開していく。 言うはたやすいが、誰にでもできることではない。少なくとも僕にはできない。 後半に登場するキーマンのキャラクターをはじめ、登場人物のキャラクターが各自ハッキリと描かれていることも、ストーリーを把握するうえで非常に役立っていると思う。 良質のエンターテイメントと敬服する次第である。
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倉橋